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季刊/凹みスタディ

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2020年 01月 02日

放蕩トナカイ達の帰還



あけましておめでとうございます。
今年2020年も皆様に凹みが訪れませんように。
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新しく僕の家来になった8匹のトナカイ。
クリスマスまでに我が家にやって来るはずだったのですが、何せ到着が押しに押し、こうして新年の挨拶をすることになってしまったのです。(わかっていますよ、今年はネズミ年)

うん、失礼な言い方だけど、この軍団、確かに、あまり、有能な、機敏そうな顔はしてませんよねぇ。いかにも遅刻しそう。。
どさくさに紛れて、牛や羊、果ては水牛っぽいのも混じってる気がするし、チームワークも苦手そう。

でもとにかく、皆さまに挨拶させるため、
一生懸命作ったので見逃してやってください。



さてさて、
今年の抱負は?

ホームラン20本。 おー!すげぇ
打率2割 えー!少な
打点20 ミニマムゥ!

そう、トリプル トゥー です。
何でも少なめに見積もるのが一番、
楽するコツです。



2019年
楽しかった中国での滞在も終わり、
あとはベルリンのがくーんと暗い冬を乗り越えるばかり。
長い間、更新されないブログではありますが、なんとか元気でございました。
自分の頭にあることをだだ流ししているだけですが、それでも後々自分で見返してみると、結構面白くもありこれからも続けていくつもりです。


さて2019年のハイライトは3つあります。
成都
禁煙
四十肩



それでは中国、成都市での二ヶ月の滞在を振り返ってみます。

手こずった到着。
成都の空港着、
さぁここから、二ヶ月間の住処を目指す。
想像をはるかに超える大きさ。
人口は1600万人ですって。(人口を一概に比べるのは危険ですが、相当な人口です。ちなみに僕がいるベルリンは400万人、東京都では1300万人くらい)

言われていた住所に着いてみたら、林立する巨大な高層マンションと、巨大ショッピングモール、地下鉄の駅などに囲まれている。
広すぎてどこが待ち合わせ場所か全くわからない。番地やヒントもないし。いやありすぎて分からない。

結局、僕らのお世話係アンランと合流するのに2時間。
本当に申し訳なかった。

さて、我々、中国に来るのは初めて。
偏りがちな、中国についての情報しかなかった僕たちですが、
いざ生活を始めてみると、
何だか固定概念が覆されていきます!

老若男女、貧富などは違えど、何だかみんな希望に満ち溢れている。
何だか眼がキラキラしているぞ。
挨拶しても何だか超素敵な笑顔が帰って来るし。
言葉が喋れない僕たちにも、何だかとても人懐っこく接してくれる。
ううーっ!何だかテンション上がるぅ。


そして、成都と言えば四川料理、もうー、本当に、とんでもなく、美味しい!
一に惣菜、二に社員食堂、三四は家飲み、五に近所にある無数の食堂。
何をどう食べたってすごくおいしい。
こんなにも美味しいんだ。
僕は凹みを探すという職業柄、40カ国以上に出かけたことがありますが、
ちゃかちゃん、
今の時点で、ダントツ、圧倒的トップです!(中華料理というより四川料理に限っての話です)

少しでも伝わってくれたらな、ということで以下がそのごく一部です。

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ふぅ、うまかったぁ。
でも、何と言ってもこれに尽きる。
アパートには3組のアーティストが共同で住むのですが、
一緒に住んだ同輩には本当に恵まれました。日本の美術家、Uさん。と最後の数週間はMさんも加わっての共同生活。他人との共同生活の経験が少ない僕なので、最初は緊張するのだけど、とにかく気持ちよく気を遣ってくれるのです。
もちろん僕も、パンツでウロウロしないよう、上下からガスを出さないよう、少しは気を遣いましたぜ。

将来また、展覧会でご一緒しましょう。


都江堰
紀元前200年以上前に造られた古代水利施設。現存する世界最古の灌漑事業として世界遺産に登録され、なんと現在でも、しっかりとその役割を果たしているのだからすごい。。
この地形を利用した都江堰の灌漑施設は、冬と春の農業用水の不足と生活用水の需要に応えるだけでなく、夏と秋に起こる洪水から街を守ったのです。この古代の知恵が、四川盆地、そして成都市を限りなく豊かな都にしたと言われているほどです。

へぇー、こんなところの凹みが欲しいなー、ということで暇を見つけて行ってきました。
簡単な山歩きハイキング気分。露天で買い食いしたり、まぁー、タラタラ歩いていると、あら、いかにも威厳のありそうな、古木が。なんだかそこだけ空気が変わっている気がして引き寄せられていきました。。
その木の根が地表に表れようとするところに、あった、あった、なんとも奥ゆかしい凹み。
けんあや共に、一発OK、早速トレースを始める。
早速人懐っこい方達が集まってくれる。温かく見守ってくれました。

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スタジオ。
僕らの仕事場は美術館の展示会場内の一部屋でした。
美術館、そしてその周辺地域が大規模な改修(新築もたくさん)中だったので、まだ仮のスタジオでした。
まーとにかく暑くて騒がしい部屋でした。
ドアというものがないので、ふと気がつくと誰かが僕らの作業をじーっと見てたりとか。結構ビビります。
騒音もすごく、時々、苦行のように感じました。

それにしてもこのプログラムではよく働いた。
今までに、いくつかのレジデンスプログラム経験はあるのだけど、
ここのプログラムはいい意味でしっかり盛り込んでくれました。
ワークショップ、カタログ、凹みマップ、公共彫刻プラン、個展、交流会、プレゼンテーション、スタジオ訪問、執筆、ミーティング、そしてもちろん毎日びっちり制作があります、そんなに詰め込まないでよ、と言いたくなることもありました、正直。
一番大切な制作の時間、を確保するのがもーうとても大変。(スタジオは10時から5時までしか使えないので)

写真はワークショップ風景と完成した凹みマップ、個展。なぜ、子供に囲まれることが多いんだろう?
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滞在、終盤はまぁ体がガタピシ言いそうだったし、頭もクラクラするくらいいろいろやることがありましたが
でも、後からいろいろ考えて、総合してみると、
やっぱり、
百点満点、最高のアーティスト・イン・レジデンスでした!
誰にでも胸を張って勧められます。




えっへん、四十肩。
職業病でもあるし、中国での無理がたたり、四十肩になってしまいました。
多分、程度で言えば少し重めかな。
決め手になったのが、全ての工具、素材、諸々を詰め込んだ数十キロの荷物を、長い間運ばなければいけなかったこと。ベルリン以外で何かを作りたければ、それなりにリスクは負わなければならないんだな。って、いつも思い知らされるんだけど、一年くらいしたら忘れちゃってね、
またすぐ、外国でのプログラムに応募しちゃうんですぅ。

しかしこんなにきついとは思わなかった。
変な動きをした時の痛みもすごいけど、
一番は夜、寝られないことかな。
痛くない姿勢を見つけるのが難しく、一晩で10回、20回くらいは目が覚めて体勢を変えなくてはいけない。それが7月から続いています。
なんだかずぅーと眠い日々です、慣れてはきたけど。

ジョギングとかリフティングの動きだと痛くないのでそういう運動は、なんとかいつも通りできています。



えっへん、禁煙。
何と言っても我が人生における最も有意義なこと!

10ヶ月目に入りました。
2019年4月1日から、(なんでこんな嘘くさい日に始めたのだろう?)
今日まで一本も吸っていないのです。
自分でもびっくり。
彩ちゃんにも、けんちゃんは本当に意志が強いね、と見直されました。
(まぁ、意志が強い人間はそもそもタバコを吸い始めないんだろうけど。)

自分が、アフタヌーンティーにどの種類の紅茶を飲もうか、楽しみにしている日が来るなんて、ちょっと前の僕は考えてもみなかった。

あと、これは制作についての心構えともリンクしているけど、多分、集中力、忍耐力、が続くようになったと思う。
選択肢を前にして、大事な判断が必要な時に逃げなくなった。
いろいろ頭の中で考えを進めていく時にも、途中で諦めなくなった。(どんだけ弱かったんだ)

あと、ポジティブな精神状態でいられることが、より多くなった。
歯も目に見えて白くなってきたので、にっこり笑うことが楽しくなった。

タバコを吸わない人は、一体何を心の、日常の支えにして生きているのだろう。そんなことがどうやったら可能なんだろう。
ってくらい極端な考えを持っていたけど、
いやいや、タバコを吸わないですむことがどれだけ自由なことか。
なんか、とっても楽チン。
いろんな制約から解放されたことが、
自分が本当の意味で、縛られない、自由の身になれたことが、今、とても嬉しい。



制作。
本気で作品を高めるということ。
いつも言ってるけどなかなか身にならない。
難しいなー。
でも
もう言い訳とかもやめよう。
こんな素晴らしい環境で、いい作品を作れなかったとしたら、
一体いつ作れるんだい?

家族もみんな元気、融通のきく時間はたくさんある、体も精神もますます健康(肩以外)、経済的にもなんとか落ち着いてきたし。
前にも書いたけど、一点一点にかかる時間はどんどん長くなっています。加工技術、スピードは格段に上がっているのにも関わらずです。とにかく、知恵を絞ったり、一番いい選択肢を選んだり、探したり、解決方法を妥協しなかったり、そういうことに時間がかかるようになってきたのかな。
すっごくいいことです。
この調子でもう少し続けさせてください。



凹みチャート
最後なりますが、ここ最近始めた、
えっへん、ザッ凹みチャートです。
というか、凹み彫刻の経過をビジュアル化するために、彩ちゃんが始めました。

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凹み彫刻を始めて20年、
ただただ、抽象彫刻を作ってきました。
僕にとっては形を探る当然の行為なのですが、
ただそんな抽象的なものを観せ続けられてもねぇ。
せっかく観てもらえるのであれば、少しでもこちらがとっかかりを用意しないと。作品に魅力を感じてもらいたいなら、こちらからも努力しないとだめだよな。
と、思うようになりました。

そこで数ある彫刻を、各時代で探りたかった形の系統別、少しずつ進化していく過程、変化のきっかけになった作品のピックアップ、技術革新後の形の変化、などいろいろな視点から分布させてみる、ということにトライしています。
最初はたりぃたりぃ、と嫌々付き合っていましたが、だんだん系統化が進んでいくと、ありゃいろんな発見が気持ちいい。

いつか、の話ですが、考えや分布がしっかりまとまったら、
大判の印刷物として発表したいと思っています。



by hecomi-study | 2020-01-02 01:05


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