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2016年 03月 22日

くやしさ君、本当にぼくを成長させてくれるのかい?

3月です。

少しずつ暖かくなり、
ベルリン人の顔にも、海溝のように深い眉間のしわの変わりに、
凪の海のようなほほえみが戻ってきました。
意味もなく微笑んでくれる人も増えてきました。(女性だと嬉しいのだけど、男性の方が多い気がします)
それにしてもそんなに天候に左右されて大丈夫なのか、生きていけるのか、と心配になります。


2月、2月、2月、

デンマークに目を廻されたような月でした。


港が開港して以来、
めざましい発展を遂げてきたコペンハーゲンの街、その街の形を彫刻にしていく、という街シリーズですが、
規模や迫力を今までより一段あげた彫刻に挑戦してみました。


普段、18時以降は作業はしないようにしているのですが(朝からきちんとできるとちょうど18時くらいに集中力が持たなくなるので)、とても間に合わないのでビールをちびちびやりながら、夜間部も開校しました。

そして、出来はと言えば、

まー、今までのベストでしょう。
もっと規模の大きいものもけっこうあったけど、
なんというか、自分を震わせてくれる彫刻が出来ました。

目標は、「審査に通ってデンマークのその美術館で展示する」、ことだったのですでに満足です。

いざ、一泊二日の強行軍でコペンハーゲンへ搬入に。
美術館に着き、けん、あや、開口一番、
いやー、きれいな空間だねぇ。
外から見てもとても重厚な雰囲気だし、
いやーテンションあがるねぇ。
わー、天窓の光は違うねー、

なんてはしゃいでいたのだけど、

設置の手順を説明していたら、
担当のメッテさんから、
あら、今日は設置できないわよ、それはまた別の日にやるの、展示デザインのチームがいて、彼らが明後日くらいから展示場所を決めていくのよ、
言ってなかったっけ、、、。
今日はデリバーだけよ。

ですって。

がびーん、
はっ?はっ? 作品の搬入と設置はセットじゃなかったの?
この彫刻は簡単には設置できないし、僕以外の人がやって壊れた、とか絶対いやです。

要項には「今日までに作品を搬入すれ」、としか書いてないし、「自分の責任で設置すれ」と書いてあるし、
搬入日と設置日が同じなのかを確認しなかった僕にも非があるのかもしれないけど、
ちょっと説明が足りな過ぎます。
デンマークに住んでてすぐ来れるっていうわけじゃないんだから。
あやちゃんだって無理して仕事休んで来てくれたのに。

いろいろ解決策を一緒に考えてくれたけど、また出直すことに。

ぷー、でも、それでも、いつでも、誰でも設置できるようなシステムにしておかないとこれからはダメだ、ということは勉強になりました。

あとコペンハーゲンの街はとても気に入りました。
とにかくすばらしいデザインが街中に溢れています。




宇部市の小学校で凹みの授業を開講させてもらいました。

とは言っても何度も日本に帰るわけにはいかないし。
そこで少しでも、臨場感が出てくれれば、と映像をつくることにしました。

監督はもちろん谷口彩子さんです。
ハンブルグ、ロッテルダムの展覧会直前だったこともあり、
せっぱつまってしっかりと喧嘩もしました。
「そんな喋りじゃ、話しにならない、観てくれる人に何も伝わらないよっ」
とか、かなりきびしくやられました。セリフを全部やり直したりもしました。
子どもたちに凹みへの覚悟だけは伝わってくれればいいのだけど。


ベルリンでは授業風景の写真を見ることしかできないけど、
子どもたちの眼が本当に印象的。
きらっきらっして、喰いつくような眼。
その眼でこれからもいろんなことを吸収してください。

出来上がった彫刻の写真や感想文をみせてもらったのだけど、子どもたちの理解度と能力に驚きました。
この学校のカリキュラムがすばらしいのか、全般にそうなのかは僕にはわかりませんが、彼らなりにしっかりと凹みを理解し、
さらにそこから彫刻を作り出すということの意味みたいなものもしっかりとわかってくれたと思います。
あと印象に残ったのが、サウジアラビアの砂漠の形をモチーフにした、緑色の作品です。
タイトルは「森林」で、感想は「サウジアラビアのさばくが彫刻にしてみると森林みたいになりました」
ですって!
がびーん。
本当に感服です。(あやちゃんは感激して涙ぐんでいました)
美術というものに、もし意義があるとしたら、こういう奇跡を起こせる力なのかな。
はからずも、砂漠を森林にしてしまう(なってしまう)自由な転換、そしてその裏にある彼のやさしさが、、沁み入ります。
こういうものをみると、少しだけ美術の力を信じられる気がします。


身を粉にして、見本の模型制作から、段取り、授業の進行、その記録、
などなどを気持ちよくやってくれた、
UBEビエンナーレ事務局の山本さん、三浦さんには本当に感謝の気持ちしかありません。
しかも、塗装時に僕の作品と同じ黄色は使わないよう気を使ってもらいました。

子どもたちの作品は4月初旬から、宇部の常磐ミュージアムで展示され、
同時に僕がつくった凹みたちも展示されます。が、普段は感じないプレッシャーを感じています。なんだこのくらい俺でもできるやん、とか子どもたちに言われないかと。
あまり厳しい眼で見ないでくださいね。



ユトレヒト

さていよいよ完全アウェイのプレゼンテーション。
オランダ、ユトレヒトにこれから建てられる政府の巨大な建築に公共彫刻をいれる、というもので、選考の過程で最後の二人まで残っていたのです。

以前やった、司法省彫刻の倍くらい、
ばーんと家が建つ程の予算だし、
気合いが入らないわけがない。

それにしても情報が少なすぎるし、ビルの図面も数日前に来たばかり。
でもその中で出来る限りはやろう、と準備を進めてきました。
何度もあやちゃんに演説を聴いてもらい、彼女も妥協無しに資料をつくってくれ、何度でも修正しました。

どんな人達を相手に喋るのかも知らされていなかったけど、
審査員の方々10人は政府のそれぞれの省から来ている方や、建築家たちで構成されていました。

そして、
みんな真剣に聞いてくれ、概ねしっかりとやれること、やりたいことを伝えられたと思います。

コーディネーターのハンスさんにも、心に響くプレゼンだったよ、と褒められたし、意気揚々と帰路へ。

ところが途中で電車が止まる。
人身事故だとか、爆弾騒ぎが、とかいろんな情報が錯綜するが、とにかく少しずつでもドイツに、そしてベルリンまで近づきたい。
結果、バスとタクシーに計5回乗り継ぎ、(最後はハノーファーからベルリンまでタクシー、ドイツの国鉄が払ってくれるのだけどそれでも300キロ弱タクシーに乗るのは初めてだった)朝、4時前に我が家へ。くたくたでした。

下は地図から抽出したユトレヒトの街の形
a0144713_3172334.jpg


そして次の日、
早くもプレゼンの結果が届いていました。

またまた、
がびーん、
だめでした。
なんてこった。

いやーこれはきつかったです。
くやしさが人を成長させる、とは言うけれど、
こんなにくやしいことがあるのかと。

でも救いは選ばれた方の作家がすばらしかったこと。
2014年のベネチアビエンナーレ、しかもアーセナルで一等賞をとっている Studio DRIFTというチームでした。
www.studiodrift.com/
圧倒的な美しさで癒されますよ。
彼らと肩を並べて闘えた、ということを誇りに思うようにします。


それはそうと、
ぼくの方が最初に知らせをみていたので、
結果をどうやってあやちゃんに伝えるか、
こんな悪魔のような知らせを僕の口から言わないといけないなんて、
本当につらかったです。(しかも鼻歌なんか歌ってて上機嫌そうだし)


悪魔の知らせを聞いたあやちゃんのくやし涙をみていると、
どうしてもっといい作品がつくれないのか、
どうしてふがいないものしかつくれないのか、
こっちが泣きたいほど痛く、くやしくなりました。

ぼくはどうとでもなるのだけど、
彼女を悲しませるのだけはもうまっぴらです。

仕方がないのでこれからは本気を出します。



凹みスタディ 公式ホームページ
kenichirotaniguchi.com
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by hecomi-study | 2016-03-22 03:31 | Comments(0)