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季刊/凹みスタディ

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2017年 08月 05日

キングな日々/円を上手に描くこと

いや、もう8月ですよね。
やべぇやべぇ。

ろくなことのないブログだ、
なんて思われたら嫌なのでいいニュースから。

8月3日は何を隠そう、
自分の誕生日。それだけでいいことです。
お昼休みに近くの公園に走りにいく。
ついでにペペ(いつもこの公園のベンチに座っていてずいぶんと仲良くなったスペイン人のおじさん)(時々ベンチで一緒に飲む仲)に日本みやげのゆず胡椒を持っていってあげる。

そして「今日、俺の誕生日なんだぜ」と無理矢理、おめでとうを言わせる。
「そうかそうか、誕生日くらい午後は仕事休みにしろよ、ビール買ってやるから」とペペにビールも買わせる。

それもそうだな、今日くらいは昼間っから飲んじゃってもいいよな、あやちゃんも仕事に行ってるからばれないし、、、なんて感じで、一杯始めるけん。

なんだかんだ夕方までちびちびやり、
そして、さあ、彩ちゃんが帰って来る時間。までにはすっかり具合が悪くなっていた。(昼間から飲むと大抵こうなります)

今日はお祝いなので豪勢にラム肉を食べる約束をしたのに、それも忘れてたし。
二人静かにごはんとみそ汁。
はぁ、自分でしけた誕生日にしちゃった、自爆だな、
とトイレにしけこむ。

しばらくして出てくると彩ちゃんが満面の笑顔で、
「けんちゃんの部屋にプレゼントがあるよ」とのこと。
えっなんだべ、花とかかな、
まさかっ、アルマジロとかじゃないだろな、

と、あまり期待せずに僕の部屋に行くとコンピュータが開いている。
ふむふむ、ニューヨークのポロック財団よりメールがあり、
ふむふむ、あんたがお金もらえる人に選ばれたよ、とのこと。

わお!
え、え、すごいタイミング、
完璧な誕生日プレゼントじゃん!

キツネにつままれたような気分で、
何をしたらいいか分からなくなった僕は、
やっぱり、もう一度飲み直すことに決めました。

生まれてきてよかった。

部屋にアルマジロがいなくてよかった。



○ツアー
6月から7月にかけては、
ベルリン-マンハイム-札幌-台北-札幌-ミュンヘン-マンハイム-ベルリンという奇妙なツアーを組みました。
3つの個展と大事な打ち合わせを、一気にこなしてしまおう、というあまり知的とは言えない企みでした。

基本的にはばっちりこなせるよう予定を立てたのだけど、
ただただ、行くところ行くところ想像以上の暑さで、それだけは本当に手こずりました。

これからは、夏だけはおとなしくしてたいな、と思えています。

以下、時系列がぐちゃぐちゃに見えるけど、覚えていることを書きます。

○ベルリンからマンハイムへ。

大部分の作品はベルリンから事前に送っていたのだけど、それでも手持ちでけっこうな荷物、夜逃げ夫婦になる。
今回はマンハイムからベルリンに戻らず、直接日本に行くしその分多かった。
恒例の肩内出血。

さて、今回は運悪く、ヨーロッパに熱波が来ていて、マンハイムも37度ということでした。
まぁ、そのくらいの気温なら、インドでも台湾でも慣れているし、、と思っていたけどそれは大きな間違いでした。

マンハイムでは建物内、ほぼ冷房皆無なのでした。
どんなに暑くても屋内に入ってしまえば大丈夫、的な考えは全く通用しません。

これは相当きついです。
ホテルの部屋は厳しい西陽が当たる最上階、外よりも暑くなっています。(しかも深夜目の前のトラム路線のレールを工事してやがったので轟音で眠れません)
ギャラリーも同じく暑く、
一動作するたびに汗が吹き出るという、かなり過酷な搬入になりました。

3日間に渡って暑さと闘いながら、
それでも少しずつ展示を進め、今までのベスト個展のひとつが出来上がりました。

オープニングの日、ライン河をみに行ったりして、のんびりして過ごす。
暑さはゆるんでいる。

○ユリア
老婦人の、、、いや怒られそうだから貴婦人にしておこう、ユリアさんは10年以上前から僕の作品を持ってくれており、今回もオープニングとクロージングにも来てくれた。
10年前なんてろくなものをつくってなかったし、変なものつかまされたっ、と文句を言いにきたのか、と思いきや、もうひとつ何年も前から狙っていたやつを買いに来たんですって。

ちなみにそんな彼女は昔、作品が壊れたから修理してちょうだい、と大事そうに僕のポケットサイズ彫刻を持ってきたことがある。なんでもどんな旅行に行く時でもスーツケースにその彫刻を忍ばせ、ホテルに着いたら棚の上に置いてくれるそうだ。「あんたのは形を変えれるからいいのよ」といろいろ、彼女なりに楽しんでいるそうです。いろんな方がいろんな理由で作品を持ってくれるけど、そういう話しを聞くのは心から嬉しく、次へのガソリンになるんです。


○札幌へ。
大事なミーティングをこなす。
すばらしい人達に恵まれました。
関わる人達が特別に優秀なので、どんどんものごとがいい方向に、ポジティブに進んでいきます。
みんなかっこええなぁ、と、ボーとしちゃうわたくしです。

とても暑いです。
そしてなんだかいろんな人にあったし、たまにはシャバを離れ、半日、あやちゃんと海に行く。
長—い砂浜(何キロもある)をキャーキャー言って歩くのはとても癒されるものでした。

○アニエスのジャケット。
10数年前にベルギーの空港でなくしたアニエスベーのジャケット。
とても気に入っていたので、買い直そうと思ったけどモデルが古くてもうどこにもない。
10数年後、インターネット上で偶然それをみつけ、即購入。
それが先日、届いたのです!うひょひょ。


○台北。

深夜に到着後、市内に行きチェックイン。

いやぁ、このコントラストはすごい。
この部屋のシンプルさは昔、バックパッカー時代に泊まったインドやタイのホテルに共通する。牢屋っぽさとか、壁の穴にダンボール貼ってるとことか。
深夜に到着したのだけど、この天国(ムンバイ)から地獄感、すごいね、とあやちゃんともども大笑い。

次の日アートフェア会場へ。
札幌の山本雄基くんに紹介してもらったハンクと初めての仕事です。
今回は指示書をつくって全て彼らに展示してもらった個展です。(遠隔個展は初めてです)
たくさんの人が観にきて、
そして眼をキラキラさせて、自分の作品を楽しんでいるのを目の当たりにする。

久々に気持ちよく、そして成功したアートフェアでした。

ハンク、チャド、スペンサーがいてくれたのであっという間に、撤収作業を終える。
あんなに苦労して組み立てたのにね。

台湾式居酒屋へ、無事に終わって打ち上げ。
本当においしい。

3日目、ハンクが運転手さんを手配してくれたので、
ぼくも彩ちゃんも台北で一番やりたかったこと、ハイキング!
No more art please!
陽明山というところに連れていってもらう。
やっぱり自然はいいな。
途中、見たこともない蝶の群れが乱舞する天国に迷い込み暑さも吹き飛ぶ。

山を下りてシャバへ。
足裏マッサージ後、行きつけの蒸しギョウザ屋さんへ。
喉も乾いてたし、ビールもうまい。めったにない100点満点の夜でした。

○ワンカップ。
姉が詳しいのでいろんなおいしい日本酒を飲んできたけど、
実は異国で飲むワンカップの味も格別です、ぼくにとっては。
なぜか沁み入るんです。
僕にとっては日本で飲む大吟醸に匹敵します。
よかばい。

それにしても台湾の人たちは老若男女みんな元気がよく、眼がきらきらしていると思う。みんな希望や目標に向かっているという感じ。
先進国(日本も含む)にありがちな、どん詰まり感もないしね。

将来的にもっともっと伸びる、キャパシティを感じました。

それにしても暑かったけどね。

○札幌に戻る。
毎日たくさんの方に遊んでもらいました。
そんな中、来年、いよいよ、けんとあやのアーティスト名の連名話しも出たし。
それが一番、興奮しました。

○自転車クーラー。
暑い時は家でうじうじしててもだめ。
思い切って野外に飛び出そう!
ぼくも時間をみつけては、数時間のサイクリングをしていました。
こげばこぐほど、風が来るので、実は冷房のない家にいるよりずっと気持ちいいんです。腹も減るしビールもうまいし。


○札幌からミュンヘンへ。
深夜着。
今回泊めてもらうエレンの家で、一足先にドイツに戻っていたあやちゃんと合流。
翌日、早速搬入。
とんとん進めました。(たらたらしてる暇はありません)
ハンブルグのみきさんも駆けつけてくれ、
こじんまりと即席個展、でもいい感じの展示が完成。
札幌と姉妹都市ということで、あやちゃんがすばらしいアイデアを思いつき、そのプレゼンも兼ねた展示です。
パーティーではたくさんのお客さんが、作品を見て高揚してくれました。
おかげで時差も跳ね返すことができました。


○マンハイムへ。
クロージングパーティーと搬出に合わせた訪問です。
セバスティアンの頑張りもあり、しっかりと結果もついてくる。
知り合いも増えたし、パーティーでも楽しく過ごす。

次の日、パッパと搬出。
セバスティアンは最後、「もう時差でヘトヘト、ギャラリーの床で、雑魚寝、昼寝するぅ」とごろついたケンをなだめ、
マンハイム市街を一望できる彼の自宅のすばらしいソファーを提供してくれた。(ビール付き)
ごろついてみるもんだ。

○まるい円。

深夜やっとベルリン我が家着(なんか深夜着ばっかりだけど)。
いやー、
ぐるりと廻って、
持っている力もうまく出せたようだし、
とても意義のあるツアーでした。
気持ちのいい円を描き、すっと閉じることができました。

なんと言っても、職業美術家の安定、という意味で、「これで、この道でよかったんだ、少なくとも間違ってはいなかったんだ」となんだか自信がついた日々でした。

いくつか素敵な話しがあって、やっと水面で息ができる今だから言えるけど、
ぶっちゃけ、作品を売ることだけで食べる、というのはみなさんが想像する以上に難しくそして過酷なことです。
ドイツに来て12年、楽だったことなんてただの一度もありませんでした。
最初の4ヶ月はコンテナに住んでたし。
しょうがないのであちこちから助成金を頂いたりもしました。
そもそも凹み、なんてもので喰っていこうなんて、ほぼ無謀に近いことなんだよな。
だって、道路にできた汚い凹みをお金にかえる職業って聞いたことあります?
普通の人はないはずです。

でもやりたいんだからしょうがないよねぇ。

新しい職業を0から立ち上げる感じなのだけど、
どこを見たって前例はないので、全て手探りになります。
十数年、あやちゃんと一緒に知恵をふりしぼって生きてきました。
その中で失敗なんてごく当然のこと、でも大事なのは1回目は失敗に終わっても、それが絶対に正しい試みだと信じるのなら何度だってやり続ける他ない、ということを最近、学ぶことができました。
同時に、この試みは正しい、と信じ切ることがこれほど難しいのか、とも実感できました。

あともちろん、試みというものをやり続けるのなら、それはやるたびに向上させなくてはいけません。毎回、同じことをしてるんだったら、それこそ先には飢え死にしか待っていません。ハイエナだって食べたくないくらい、干涸びてたりしてね。

いろんな人の話しも聞いたけど、結局は自分たちの頭で考えて、生活と制作の哲学をつくっていく他、道はない、ということも学びました。それには人と会うことをあえて断ったベルリンでの閉じた生活が役に立ちました。(彩ちゃんに教わりました)社交好きの僕としては最初、鎖国は難しかったけど、作品の密度が目にみえて高まってくるのを実感するようになってからは、自分から進んで閉じることができました。(もちろん閉じる意義はごく一部の職業にしかあてはまらないとは思っていますが。)

ひとつのことを真剣に望むのなら、他の大切なことを2つも3つも犠牲にしなくちゃいけないんだろうな。


あれ、なんでこんな話しになったかというと、、、、
なんでだろ。

今なら自信と実感を持って言えるからかな。




5月です。
英語でマーチです。
嘘です。


桜もすっかり散り、
公園のリス達は、冬に備えて餌の確保に大忙しです。(それにはまだ早すぎます)

○ムンバイ
さて、5月下旬、インドはムンバイに行ってきました。
インドが誇る大都市、人口は2300万人くらい(おえっ)、ハリウッドをもじったボリウッドと呼ばれるインド映画の本拠地でもあります。

新しく建設される複合施設にあるオフィスビルのロビーに設置する彫刻の最初の打ち合わせです。
ミーティングの日程が決まりチケットが送られていたのが出発の2日前。
それまでは日程もなんとなくしか知らされていませんでした。
どうなることやら。


初日、深夜に着いたのだけど、
えー、この暑さ、なんというか、もう暴力の域に達していません?
(後から聞いたけど、ムンバイでも一番暑い時期ですって。道理で観光客をほぼ全く見なかったわけだ)

なぜか、お抱え運転手付きで5つ星ホテルにチェックインするけんとあや。
(二人は滞在の最後まで、高級ぶりに慣れることができなかった)


2日目、朝食時、ミュンヘンから来たコーディネーターのエレンと合流、さっそく彫刻設置現場へ。
でかっ。広っ。そして暑っ。
でも僕が担当するビルのロビーは心地よいサイズ。
これなら大丈夫そう。

3日目、今日は朝からシティツアー。
運転手さんと、優秀なガイドさんを手配してくれていた。
短い時間で、街をけっこう深く観れた。こういうのいいな、今度またやってみよう。


4日目、今日はいよいよ初顔合わせ。

ボスのマニッシュさんがバーン、と登場。
いろいろと意志の疎通がとれ、
うまく動き出す。
マダムと言われて喜んでいるあやちゃん。

いろんな金具とか工具とかを売っているマーケットへ。
マニッシュが彼の部下を二人、同伴させてくれる。

他の彫刻に使いたいな、と思う金具とかも、全部彼らが買ってくれた。(何度も断ったのだけど)


ホテルに戻って、エレンと乾杯。よかったね。

夜、運転手さんと空港に。ベルリンに帰る。

キングな日々でした。


○クリスティーネとの友情。
彼女は僕らの税理士さん。
その仕事に留まらず、いろいろなアドバイスや、難しい案件にも親身になって相談にのってくれている。

そんな彼女に作品を持ってもらったのをきっかけに、(彼女の家の前でみつけた凹み)食事に招待しあったり、花見に行ったり、とても仲良くなった。

彼女の友達のアルミンやジョゼフも紹介され、なぜか今度アルミン(外科医さん)の働く病院でも個展をすることになったり。
みんな激務の中で、それでもなんとか自分の時間をつくり、それを楽しんでいるのが魅力的です。

彼らのようにいいオーラを持った人間になりたい。


○KRAG
5月のある木曜日、あやちゃんは仕事の飲み会。
一応誘ってもらったけど、僕にはもっともっと大事なことがある。
やらなければならないことがある!

そう、それは、KRAG。

さあこの意味は何でしょう?どこかの保険会社かな?

ピンポーン。
「けんはいつでも、立派に、あきらめずに、がんばる」
ブー。

正解は、

唐揚げ。でした!

別にあやちゃんが居ないのを、見計らわなくてもいいのだけど、
なぜか、
こういうタイミングになってしまいます。
僕のレシピでじっくり漬け込んで、(コリアンダーと豆板醤をドッポリ入れる)
からりと揚げる。
それをすばやくビールで流し込んで、、
うまい、うまくないはずがない!

たぶん20個は食べただろう。
しかもおつまみは、日本ハムが球団タイ記録の一試合7本塁打を打った映像。
最高でした!


次の日、金曜日には子羊の骨付き肉という、我が家一番のごちそうだったのだけど、
前の日に飲み会でウイスキーを飲み過ぎた彩ちゃんは2本しか食べることができず。
しめた!
ぼくは残った7本をたいらげたのであった。

そしてもちろん、その2日間に渡る暴飲暴食の代償は高くつくのであった。

土曜日、あやちゃんの同僚、韓国人のカップルを招待し飲んだのだけど、それがとどめになり、
日曜日の朝、目が覚めるとなんだか身体の具合が。。。

なんとか朝食(といってもお茶漬けだけ)を食べたけど、しばらくして全て戻す。なんだろう、この具合の悪さ、何か変なモノにあたったか、それとも何かの祟りか。

そしてついに二人で導きだした結論は、
(結論を導きだすのは案外簡単でした)
はい、「胃の疲れ」、これでした。

もちろん、とても仕事ができる状態ではありませんでしたが、
あやちゃんの「ちっ、何やってんだか、仕事になんないじゃないっ」的、きつい視線にも耐え、
夕方、なんとか持ち直す。
えへへ、
と照れ笑いするしかありませんでした。
(いいオーラを持つ日は遠そうです)


○トムクルーズ訪問
マンハイムのギャラリスト、セバスティアンくんがアトリエに来る。
個展に出品する彫刻を選んでもらう。

ちなみにぼくのビジネスパートナーはイケメン揃いです。

セバスティアンはトムクルーズ、
バルセロナのホセアントニオはジョージクルーニー、
台北のハンクは堤真一、
さらに僕を応援してくれているハンブルグのお客さんはキアヌリーブス、
ムンバイのマニッシュも超セクシーだし、

最強の豪華俳優陣となっています。

いい映画撮れるんじゃないかな、
みんなギャラ無しでやってくれそうだし。

あ、そうだ、ヘコウッドとかいう配給会社名にしよう。








by hecomi-study | 2017-08-05 00:47


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